看取り介護
厚労省のサイトに掲載されている、平成30年度介護報酬改定に関する審議報告の概要では、この報酬改定の目的の一つに、「地域包括ケアシステムの推進」が挙げられている。そのために中重度の要介護者も含め、どこに住んでいても適切な医療・介護サー ビスを切れ目なく受けることができる体制を整備する必要があるとして、「中重度の在宅要介護者や、居住系サービス利用者、特別養護老人ホーム入所者の医療ニーズへの対応 」のための改訂を行ったことが示されている。
その具体策によって終末期の医療対応も、それぞれの住民の居所で行なえることにつながり、終末期であるという理由だけで、医療機関に入院しなくてよい人たちが増えることが期待される。
具体的には、ターミナルケアの実施数が多い訪問看護事業所、看護職員を手厚く配置しているグループホーム、たんの吸引などを行う特定施設に対する評価を設けている。
ターミナル期に頻回に利用者の状態変化の把握等を行い、主治の医師等や居宅サービス事業者へ情報提供するケアマネ事業所に対する評価として、居宅介護支援費にターミナルケアマネジメント加算 が新設されたほか、末期の悪性腫瘍と診断された場合であって、日常生活上の障害が1ヶ月以内に出現すると主治の医師等が判断した場合については、居宅サービス計画書の変更の際に、サービス担当者会議の招集を不要としている。
看取り介護実績が多く、今後もその機能強化が期待される特養については、特養の配置医師が施設の求めに応じ、早朝・夜間又は深夜に施設を訪問し入所者の診療を行う際の評価を行うことで、特養内での看取りを進めるほか、そのような医療提供体制を整えた特養内で、実際に利用者を看取った場合の評価をさらに充実させた。
在宅復帰機能をより評価する方向が示された老健についても、ターミナルケア加算は引き続き算定できる費用としており、老健の在宅復帰機能とターミナルケア機能が矛盾するものではないとしている。
新設された介護医療院も医療ニーズに対応できる新施設であるとともに、ターミナルケアの機能を持った新施設であるともいえるわけである。
このように介護報酬改定では、多死社会に備えて、「看取り介護難民」が生じないように対策されているのである。
そうであるがゆえに、保健・医療・福祉・介護関係者は、医療と介護のすべての場面で、看取り介護に対応する基礎知識と援助技術を備えておかねばならない。
看取り介護・ターミナルケアは、特別な介護ではなく、日常介護の延長線上にある必然の介護として、どこに住んでいても看取り介護が受けられる地域社会でなければならないのである。