寄り添わないケアの大事さ、日頃のセルフチェックを!
既存施設のネックはハード面といわれ、どうしてもケアの導線が長いし、目の届かない範囲が広く存在するため、なかなか個人に職員が適切に「寄り添う」ということが難しい面がある。
グループホームや新型特養は、この点はハード面が「十分仕事をする」つくりとなっている。
しかし、人間関係はあまりに濃密になりすぎると息が詰まることがあり、一人になる時間や場所が絶対に必要だ。寄り添い方も、寄り添っていることを気付かないように見守ることも大事だ。
ところが導線を極端に短くしたスペースでケアサービスを完結させてしまうと、その導線からはずれる利用者の行動を「問題行動」あるいは「落ち着きがない」と捉えてしまう向きがある。
それは違う。ケアサービスの提供側の都合にしかすぎないことを忘れてはならない。
座ったきり老人を作り出すケアではないのだ。共用スペースに静かに座っている高齢者に対しても、それが「利用者の意思に反した行動制限」ではないか、という意識を常に持って介護サービスの提供に当たる責任がある。
ユニットケアの中で、共用スペースに常時いないと「ひきこもり」と判断されたのではかなわない。ひとりひとりの生活の個別化ができてこそのユニットケアではないか。
それと導線を短くすることで、職員の動きの流れが止まる、という現象もしばしば起こる。認知症の方の行動はパターン化できるものではないので、自然な流れと動きというのは必要なことが多いのだ。
導線の短さが職員の動きを止めるとは、気の配り方も滞るという意味だ。これが一番危険なケアスタイルを生み出す。そのことにもきちんと配慮して、日頃のセルフチェックに努めなければならないと思う。