人材難を嘆く介護事業経営者に勇気を与えます
人材難を嘆く介護事業経営者の方が増え、人材確保が困難で、将来の介護事業経営に不安を持つ経営者が増えています。
人口減少社会の中で、生産労働人口が大幅に減るわが国では、全産業で人手不足感が助長されており、その中で他産業より待遇が悪いと認識されている介護事業から、人材が枯渇するのではないかという不安は現実化する恐れがある。
ところで人材難を嘆く介護経営者の中には、座して待っていても人材が湧いてくると勘違いしているように見受けられる人もいる。しかし人材は湧いて出てくるわけではない。何の努力も工夫もしないところに人材は寄ってこないし、人材は生まれないのである。
今求められることは、自らが人材を育てることである。介護事業経営で大事なことは、営利主義に走ることではなく、人を育て進化に目を向けた経営をすることである。
自らの組織が、人を育てる組織としてのガバナンスが確立されているのかを含め、介護事業経営者は人を育てる組織を目指さねばならない。
今、感じていることは、人を育てるということは、とても難しいという至極当たり前のこと。
人を育てるためのマニュアルなど、「あってなきが如し」である。人の器はそれぞれ異なるので、一つの方法ですべての人が育つわけではないからだ。百人の生徒がいれば、百通りの人を育てる方法論んが必要になる。人を育てる仕事に携わっていると、つくづくそのことに思い至る。
ただ大事なことは見えてくる。人を育てるために絶対的な方法はないからこそ、人が育つということに感謝する気持ちを持たない指導者の下には、人材は集まらないし、人材は育てられないということだ。
自分の講義を聴いた人、自分が教えた人が必ず何かを掴んで成長するという考えは、指導者のおごりでしかない。人が育つということはそれだけ難しいことなのである。
そうであるがゆえに人材育成にかかわる人は、誰よりも人が育ってくれることに感謝する人でなければならない。人を育てることは、人の成長に感謝することなのである。
指導者として心得ておかねばならないことは、その人の長所を見つけるであり、長所を認め結果が良ければ褒めることである。そして快適な職場環境を作ることを目標に、継続して職場をリードしていくことが大事だ。
指導者として目標にすべきことは、すべての職員が一定レベルの仕事ができるように育てることであり、自分で考えて行動する職員を育てることである。
そのために勇気をもって、温かく、かつ厳しく注意を行うことを厭ってはならない。
《はぐぐむ》とは、親鳥がひなを羽で包んで育てることを意味するように、人材育成とは、そこに居る後輩たちを大事に守って発展させることである。大事に守って発展させるためには、ある人はそっと肩を抱く必要があり、ある人は背中を強く押す必要があり、ある人はじっくり話をする必要がある。優しい言葉が必要な時と、強い叱咤激励が必要な時がある。そこをどう見極め、どう使い分けるかが指導者の力量として問われてくる。
当然そこに必要になるエッセンスが「愛情(人間愛)」であることは今更言うまでもないと思う。