国の施策に頼ってばかりの人材対策は成功しないはなし
厚労省が都道府県別の介護職員充足率の2025年度推計を公表した。
それによると充足率が最も低いのは、福島県と千葉県の74.1%となっており、続いて京都府の79.3%、沖縄県の81.2%となっている。逆に充足率が高いのは山梨県の96.6%がトップで、佐賀県が95.7%、島根県が94.4%と続いている。
全国平均は86.2%で、北海道は83.2%とこれを下回っており、1.9万人の介護職が不足するとされている。
北海道医労連の介護対策責任者という人物が、「このまま人手確保の対策をしなければ、サービスの質低下や職員の負担増につながる」と述べている。
しかし人材のすそ野を広げたり、リタイヤした経験者の再雇用の掘り起こしを行ったりという人手確保の対策は様々にとられているのだ。それが機能していないことが一番大きな問題で、人手確保の対策をいていないわけではないのに、十分な人材・人員確保策につながっていないことの認識から始めないと、この問題の有効な処方箋は作ることができない。
そもそもこの介護対策責任者なる人物は、何が有効な人手確保の対策だと考えているのだろう。その具体策もなく、漠然としたイメージでインタビューに答えているとしか思えない。
またこの人物は同時に、一番の課題は賃金アップとしているが、どれだけの賃金アップで、どの程度の職員充足率が図れるのかという検証作業をしているのか疑問だ。賃金を上げれば確実に人手は増えるのか?その賃金とはいったいいくらを想定しているのか?
介護職の平均賃金は、全産業平均より低いというが、社会福祉法人の正規職員だけを取り上げれば、それは平均値を上回るというデータもある。そこさえも介護職員が充足していない要因は、賃金だけの問題ではないということではないのか?つまり賃金アップだけで人手不足が解消するほど、この問題は単純ではない。介護の職業を続ける動機づけを護る対策や、働く環境を含めた労務管理ができていない事業者が多いことも原因の一部になっているのだ。
むしろ僕は国の施策に頼った人材確保は不可能と思っている。全事業者が人員を十分確保して介護事業経営を続けるのは幻想だと思っている。だからこそ介護事業者独自の人材確保策が求められているということについて「カテゴリー介護人材確保」の中で分析と提言を行ってきた。
細かな具体策については、他事業所と差別化を図って、人材が集まる事業者となるための、国の施策に頼らない人材確保戦略が、介護事業者自身に求められてくる。
その時に一番大事なのは、人を育てる機能を、事業者内にきちんと持ち、本当の意味でのOJTができる介護リーダーを育てていくことだろう。
介護人材が確保困難な社会情勢に対して、いつまでも第3者的なコメントでお茶を濁すような人物が、人材不足対策を担っているようではお先真っ暗である。
それにしても介護問題に対して、関係者がこんなコメントしかできないこと自体が、介護業界の人材枯渇をあらわしているのかもしれない。残念である。