Allo介護の不思議な世界

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2019年10月の新処遇改善加算で、笑えない問題が山積



来年10月の消費税引き上げに伴って支給されることが確実視されている「新処遇改善加算」は、現行の「介護職員処遇改善加算」と大きな違いがあり、それによって現行加算の状況とは全く次元が異なる問題が生ずる可能性がある。加算を巡って影響を受ける人たちに泣き笑いが生ずることもあると思う。



今日まで示されている方向性は以下の通り



・新加算の増収分は「経験・技能のある介護職員」の給与に充当することを基本的なルールとする。


・「経験・技能のある介護職員」の範囲については事業者に一定の裁量を与え、基本は勤続10年以上の介護福祉士とするが、業界10年の介護福祉士も対象として扱えるようにする。


・同じサービスの中でも2段階の加算率を設定する方向で検討を進め、介護福祉士の手厚い配置が要件の加算を取得しているなど、人材の確保・育成に力を入れている事業所を相対的に高く評価。


・介護福祉士の資格はないが有能なベテランも含めるなど、より柔軟な運用を認めることも検討。


・勤続10年以上の介護福祉士に最も多くのリソースを割く(例えば増収分の○○%など)


・勤続10年に満たない一般の介護職員を2番目に位置付けてリソースを割く


・他職種などに渡すリソースを一部にとどめる


・現行の処遇改善加算と同様に、サービスごとの加算率でリソースを分配する仕組みとする。


・既存の処遇改善加算の「加算I」から「加算III」のいずれかを取っていることを算定要件とする。


・新加算の財源は、消費税で1000億円、40歳以上の保険料と高齢者の自己負担で1000億円の合計2000億円。



もちろん、今後の議論の中でこの方向性が変わることがあることは否定しないが、今現在は上に書いている方針に沿って、支給議論が進んでいるのは事実である。



この加算は対象となる、「経験・技能のある介護職員」が自ら申請して受け取るわけではない。そのことを知らない人はいないだろう。



しかし現在の処遇改善加算と大きく異なる点は、所属事業者が加算を算定した分を支給するに際して、事業者の裁量で加算支給対象職員以外の職員にもこの加算で得た収入分を配分できるということだ。



現行の処遇改善加算は、介護職員に対して支給された額を下回ることなく、すべて加算支給対象となっている介護職員に支払わねばならない。つまり介護職員に対して支払われた加算額は、すべて介護職員に対して支給されるのである。



しかし新加算の場合は、加算対象職員に対する給与等の支給割合は一定程度以上のリソースを設定するとされるが、事業者がその他の職員にもその一部を支払うと決めた場合は、加算額のすべてが加算対象職員に支給されないということになる。



しかも従前の処遇改善加算の支給対象者が「介護職員すべて」であったのに対して、新加算は、「業界10年勤続の介護福祉士」が基本である。この際、業界勤続9年の介護福祉士は、9/10が支給されるとか、業界5年の介護福祉士に1/2が支給されるとかいうことはなく、どちらも支給ゼロとされる可能性が高いのだ。この場合、業界10年以上の介護福祉士資格のない介護職員もゼロ支給である。



そしてこの加算は、単純に「経験・技能のある介護職員」×○○単位ではなく、「経験・技能のある介護職員」が多くいるほど加算率を高くするのだから、決められたリソースの範囲で他の職種にも加算分を手渡すためには、加算対象者ができるだけ多くいてほしいわけである。



つまり特養や老健であって介護福祉士がいても、施設がオープンして間もないために、ベテラン職員がいない場合は、新加算の算定ができないということもあり得る。この場合は、他職種の分配さえできないということになる。



事業者の裁量で、支給対象となっていない介護職員や、その他の職種の職員にも、加算分の何割かを給与等に上乗せしたいと考えても、加算の支給対象となる10年以上の経験のある介護福祉士が数多くいない限り、分母となる加算額が少なすぎて、分配できないという事態も考えられる。



そのため事業者によっては、この加算を多く得て様々な職種の職員に分配しようとして、経験年数のある介護福祉士の引き抜きを図る動きが出てくるかもしれない。しかしその際に、「うちの施設に来てください。ただし加算算定しても全額はあなたに行きません。どうか他の職種の処遇も改善するのに協力してください。」と言っても誰も来てくれないと思う。



加算された分を加算対象職員以外にも分配するということは、加算対象となるベテラン介護福祉士に支給される額は、分配される分削られていくという意味だ。そうなら、「うちの施設では、加算分は他の職員に振り分けないで、あなたにすべて支給します」という事業者に、「経験・技能のある介護職員」はなびいていくのではないだろうか。



そう考えると、介護職員の人員不足の改善を最大の課題と考える事業者においては、「経験・技能のある介護職員」以外への加算分配は行わずに、対象職員へすべて支払い、他の事業者へ引き抜かれないようにするとともに、そのことを餌にして、他の事業者から「経験・技能のある介護職員」引き抜こうと考える事業者も多くなるのではないだろうか。



事業者からすれば経験10年に満たない介護職員や、そのほかの職種の職員に加算分を分配するのは、従業員の公平性を図るという目的に沿った方針であると思うが、経験10年以上の介護福祉士からすれば、本来自分の経験に対する加算が削られて満額支給されないとううことは、「中間搾取」としか思えなくなるのは当然で、不満を全く抱かない人はいないだろう。そういう時に、支給対象が法人10年の経験ではなく、業界10年の介護福祉士も対象として扱えるようにするのであれば、退職して別な組織に所属することで満額支給されるなら、そちらのほうが良いと考えるのも当然のこと。



このように新加算は様々な問題を生じさせる要素をたっぷり含んでおり、支給対象者以外の職員への分配も、経営戦略の中でその可否を考えていかないと、後々禍根を残しかねないことになる。



そういう意味で事業経営者は、この加算の算定要件が今後どのように確定していくかを常に意識しながら、事業所内でその支給方法をどうするのかということを、戦略的視点から考えていく必要があると思う。