日本医師会や総務省の思惑から垣間見る、1年後の介護報酬について
11/1に財務省の諮問機関である財政制度等審議会・財政制度分科会が開催された。
この中で財務省は、来春予定されている診療報酬改定について、市場実勢価格に合わせて薬価を引き下げるほか、本体報酬も賃金や物価に比べて高水準だとして引き下げを求め、全体で「2%半ば以上の引き下げが必要」と主張している。
1%の引き下げ効果は、患者負担を合わせた全体の医療費が約4.600億円引き下げることにつながる。
今更だが、診療報酬は2年に一度、介護報酬は3年に一度改定されることになっている。よって6年ごとに診療と介護のダブル改定が行われることになる。2018年度はそのダブル改定であったが、その際は診療報酬で薬価が大幅に引き下げられたことにより、それを財源として診療・介護の両報酬の本体報酬はプラス改定になった。
その改定に引き続き、今年度は消費税のアップに対応して診療・介護の両報酬がさらに引き上げられ、これで両報酬は2年連続のプラス改定となったが・・・本当にそうだろうか。
確かに2年連続で診療・介護の両報酬は上がっている。しかし今年度の改定を通常の改定と同様に評価されてはかなわない。なぜなら今年度の改定は、介護報酬に特定加算を新設したほか、消費税アップに対応したに過ぎず、医療・介護事業者の収益アップにはつながらないものにしか過ぎないからだ。
プラス改定という事実だけが前面に押し出され、財政の厳しい折に、2年も続けて報酬を引き上げているのだから、次は少し我慢してマイナス改定を受け入れなさいというふうに誘導されている。
当然、再来年の介護報酬改定に対しても、財務省はマイナス改定が当然だという態度で臨んでくるだろう。
介護報酬は診療報酬の風下に立つのだから、常に診療報酬改定の影響を受けざるを得ない。だからこそ来春の診療報酬改定結果がどうなるのかを注目せざるを得ない。
介護関連職能団体のどこより強い力を持つ日本医師会が、診療報酬を2%半ばまで下げるという財務省の提案をそのまま受け入れるわけがなく、診療報酬を巡る戦いはここからが本番である。表裏、様々な場所で微妙な綱引きが始まっている。
しかし仮に医師会の力によって、診療報酬改定が財務省の言う通りの引き下げとはならなかったとしたら、そのしわ寄せは診療報酬改定の1年後の介護報酬改定に来るのではないだろうか。思った以上に診療報酬の引き下げができなかった分、介護報酬の査定は厳しくなり、マイナス幅が広がる懸念がある。
一方、財務省の思惑通り診療報酬が下げられたとしたら、診療報酬もあれだけのマイナス改定を飲んだのだから、介護報酬も文句を言わずに引き下げを受け入れなさいと言うことになりそうだ。
ということは今後の診療報酬改定の攻防がどう転んだとしても、2021年度の介護報酬改定は厳しいものになるということが明らかである。プラス改定は望むべくもなく、マイナス改定の引き下げ幅をいくらに抑えるのかという議論にならざるを得ないかもしれない。
背筋が寒くなるとはこのことをいうのかもしれない。どちらにしても介護事業経営者の皆さんには、今から覚悟と備えが求められてくると言えるだろう。