夢の跡
少し前のはなしです。
ある方が特養で働いていましたが、独立して経営していた小規模通所介護事業所が閉鎖されている事業所があります。そこは「お泊りデーサービス」事業所でもあったはずです。独立直後には顧客も順調に確保され頑張って営業していた。彼も独立した後、事業経営者として頑張っており、一時は他事業所の立ち上げコンサルみたいな仕事もしていました。
ただ当初から通所介護事業をその規模で営業するには、限界があると指摘されていました。仮に10年事業経営を続けた際に、定着した従業員にいくらの報酬を支払えるかを考えたとき、その事業規模のままでは人が張り付いて長く働くことができる給与モデルは確立できないので、事業規模を拡大するか、事業種類を増やして経営規模を大きくするしかないと指摘されていた。案の定、数年後にその経営モデルには行き詰まり、手を広げた多種別の事業や保険外事業も黒字化する事業にはならず、経営撤退を余儀なくされた。
その後、その事業所は他の会社に売却され、名称を変えて同じ規模で通所介護事業を行っていたが、数カ月前にそこの経営も行き詰ったのか、今その事業所は営業しておらず、事業所は無人のまま放置され、すでに廃墟感が漂っている。
介護事業を支える従業員は、霞を食って生きているわけではないのだから、介護事業経営者には、人材として長く働き、事業貢献してくれる職員に、適切な報酬を手渡すという考え方が不可欠である。それがないところに有能な職員は寄り付かないし、有能な職員のいない事業所に、いつまでも顧客が寄り付くわけがないという当たり前の経営常識を持たねばならない。
そうであれば1日18人程度の定員も埋まらない経営手腕ではどうしようもないが、いつまでも地域密着型の小規模通所介護単独経営という事業形態で、定期昇給を続けて職員に適切な報酬を手渡すことは不可能だということにも気づくべきである。
ここにどう手当てしていくかという事業戦略を持たない経営者は、それは倒産予備軍であるといって過言ではない。従業員もそこのところを見極めて、自分の将来を考えなけれなばならない。
夢が続く時代は過ぎて、夢の清算が行われている時代に入っている。