ありえない!デイケア事業所送迎中の事故
2019年10月に北海道内北斗市内の通所リハビリテーション施設の車いす移動車に乗っていた男性(81歳)が、走行中の車内で車いすごと転倒して意識不明の重体となった。
報道のきっかけは、行政指導の内容が明らかになったことである。北斗市はこの施設に対して「職員の安全対策が不十分だった」として今年1月から3カ月間、利用者の新規受け入れを停止する処分を行った。
通所サービス送迎中の事故は決して少なくなくて、過去にはリフト付き車両のリフト操作中に、車いすの固定が不十分で、リフトから道路に転落して利用者が亡くなるという痛ましい事故もあった。
しかしワゴン車内で、車いすに座っていた利用者が、車いすごと転倒し重篤な結果につながったという事故というのは、今まで一度も聞いたことがない。
報道によると事故は昨年10/3に発生したもので、檜山管内の男性を乗せて送迎中のリフト付きワゴン車が、交差点で右折した直後に、男性が車いすごと後ろ向きに転倒し、頭を強く打つなどして意識不明の重体となったというもの。送迎車両には職員二人が同乗していた。
転倒の原因は、車いすの男性をリフトで車に乗せる際、本来は職員がフック付きのバンドで車いす4カ所を固定しなければならなかったが、全てのフックをつけ忘れていたという・・・。
しかしこの事故原因(転倒の理由)はとても納得できるものではない。こんなミスはあり得ない。最大の疑問は、車いすの固定を忘れるだろうか?
車椅子のフックを忘れてしまうことなど考えられず、車いすに乗っている人をリフトに乗せ固定したあとリフトを上げ、そこから固定を外してワゴン車内に車椅子を押し入れた場合、その流れでかならず車内でフックに固定するのは一連作業である。送迎担当者ならその作業は体で覚えていることで、普通フックをかけることを忘れることは考えにくい。
運転手以外の同乗職員が、フックで車いすが固定されていないことに気が付かないのもどうかしている。そもそもフックに固定する器具はどこにどのような状態で置かれていたんだという疑問も生ずる。かけていないフックが同乗している職員の眼に入らないことなどあり得ない。
そう考えると、この事業者の送迎担当者は日常的に送迎の際に、「車いすのブレーキをかけてさえいれば問題ないだろう」という根拠のない安心感で、日常的にフック固定を怠っていたのではないか。
本件以外にもそうしたケースがなかったか、詳しく検証される必要があるように思うが、それがされないまま、この事故はケアレスミスにして幕引きがされそう。
本件は道警が1月、自動車運転処罰法違反(過失致傷)の疑いで、運転していた男性職員を書類送検し、北斗市が行政処分を行い、同事業所の本体施設の事務長が「事故を受け、職員同士で声を掛け合いフックの装着を確認させるなど、教育を徹底している」と語つことで終止符が打たれようとする感がある。
何度も言うが、通所送迎を一度でも経験した者にとっては、リフト車両を利用する車いす使用者の、「フックのかけ忘れ」など、普通は考えられないこと。ここは一般の方には理解できないことかもしれない。
どちらにしても、ちょっとした油断が利用者の命に係わる事故を引き起こしているという事実がある。このようなヒューマンエラーは絶対になくしていかねばならない。
意識不明の重体になった利用者の方が、今どうなっているのか報道はない。
しかしもしこんな事故によって、命を失うことになるとしたら、最も利用者が信頼を寄せて、暮らしの質を護ってくれると信じていた事業関係者によって命を奪われるという結果にしかならない。
それはあまりに哀しい残念な最期である。このようなことを繰り返さないためには、「事故原因には、隠された真実がある」なんてことがあってはならない。