AIのケアプラン!!画一的なプランへの批判はありますが、AI作成プランに限って向けられる問題ではない。むしろ標準以下のスキルの持ち主により、その価値観から一歩もはみ出さない画一的プランは存在している方が問題と思うこと!
茨城県内にある居宅介護支援事業所を対象とした事業で、自ら作ったプランとAIによるプランを比べたうえで、より良いプランの内容についてそれぞれ検討してもらうとしている。具体的には利用者・家族、サービス担当者などとの話し合いの際に、AIの将来予測を用いて適切な選択を支援してもらうそうである。
報道に対し「居宅サービス計画が機械的・画一的なものになる」、「居宅介護支援事業所の業務はそれほど信頼されていないのか」といった否定的な声もあるが、一方では、忙しい介護支援専門員の業務の軽減につながるのなら賛成、居宅サービス計画の標準化につながるので賛成などの声もある。
これは、ポジティブに考えてよいと思う。
画一的なプランへの批判というは、AI作成プランに限って向けられる問題ではない。むしろ標準以下のスキルの持ち主により、その価値観から一歩もはみ出さない画一的プランというものは現在でも存在するわけだし、そちらの方が問題と思う。
AI作成プランは、それより高いレベルで複数のサービススケジュールを抽出する可能性が高いのだし、ケアマネジャーの立案したプランと比較して利用者が選択できるのであれば、そこは特段の問題にはならないだろう。むしろケアプランの標準化につながる可能性の方に注目すべきである。
ただし居宅サービスの標準化が図られていない状態で、居宅サービス計画だけ標準化しても、それは意味があることなのかという疑問は残っている。
AIによる居宅サービス計画作成が実用化されたとしても、居宅介護支援事業所や介護支援専門員は必要である。
AIが作成できるのは、あくまで「サービスの種類や頻度、組み合わせ」のみで、利用者のニーズ等に合致するサービス事業者はどこかという部分までは介入不可能だから。
人には言葉や文字だけでは表せない「好み」という部分での、「合う・合わない」という部分がある。それはまさに感情がサービス選択の重要な要素になるという意味であり、感情と感情が触れ合う中でしか抽出できないサービスの選択肢が存在するからである。ここは人工知能でも、人間に取って替わることのできない部分である。
加えて居宅サービス計画は、サービススケジュールを決定するに際して、「調整」が不可欠である。ショートステイという社会資源が必要とされる利用者に、そのサービスを結び付けるに際し、どこの事業所のサービスが利用者にマッチしているかというニーズのみに限らず、どの事業所が当該利用者を受け入れることができる体制にあるか等、利用につながるまでに様々な調整力が必要となる。場合によってそこには、居宅サービス計画作成担当者とサービス事業所担当者間の、人間関係というコネクションが介在することもある。AIと人とのコネクションはできないだろう。
そういう意味で、AIは居宅サービス計画のひな型を作ることはできても、サービス事業者を選択して明示する本プランは作成できないし、ましてや個別ケアの方法論を計画する施設サービス計画の作成は不可能であると思える。
ところでAIによるケアプラン作成を推進することが話題となった当時、日本介護支援専門員協会は、文書作成の効率化でタイムリーな支援につなげられると前向きに捉えつつ、「尊厳に通じる価値や文化、生活環境などは人でなければ分からない。全面ICT化は憂慮する」と慎重な姿勢を求めていた。
ただこの事業は、「ケアマネが専門的なアドバイスを受けられるよう、認定看護師などに同行してもらう取り組みもあわせて行う。」とされている点が問題である。なぜケアプランの評価につながるアドバイスにおいて、ソーシャルワークの専門家ではない認定看護師が必要があるのか?
いろいろあるが、大いに注目したい事業である。