今後、高齢者の役割
高齢化が進む地域社会の中での高齢者自身の役割の重要性を考えてみたい。
そもそも高齢化問題を考える際、我々の視点は、寝たきりや認知症といった社会的弱者としての高齢者という位置づけのみが先行した「老人問題史観」が一人歩きし、高齢者を重荷とみなす見方が広がりがちである。
しかし現実には高齢者の85%が介護や援助を必要としておらず、この比率は、過去においても将来においても大きな変動はないと考えられている。
従って、もっと積極的に介護や援助が必要でないマジョリティとしての高齢者を社会システムの重要な一員として注目し、その経験と知恵と能力等を総合的に集約し、家族、地域、企業等の社会システムの中にうまく組み込んでいく方法が必要だ。
なぜなら少子化が進む中、高齢者の知恵と能力とエネルギーを今まで以上に発揮しないと、若年労働力不足を補えないし、逆にそういうものを活用することでボランティア活動等により、地域を支える社会資源ともなり得るからだ。
特に超高齢化社会では、専門家中心の居宅サービス提供システムと非専門家である地域住民による地域福祉システムの相互補完が威力を発揮すると思え、マジョリティとしての85%の元気な高齢者が社会貢献活動の担い手として重要になるからだ。
ところで高齢者を取り巻く社会システム環境は「家族」ではなく「個人」を軸に再編され、家族の縮小も続いている。
高齢者が役割と生きがいを持って社会に貢献する資源としてみると、徐々に家族と同居しない高齢者が増え、受け皿としての家族規模が小さいか、身近に住んでいないなどで、せっかくの高齢者の技能や経験を生かされない、という事態が考えられる。
また高齢者を家庭や会社等で、役割がどんどん縮小させられていく存在と捉えたとき、役割の創造、維持、回復、拡大こそが高齢者政策の主流に置かれなければならないのではないだろうか。
そうした高齢者の役割の可能性を発揮する場として、家族に替わるものが地域社会だ。
地域社会の中で、高齢者が新たな役割を得て、その役割を一人に集中させず、多人数に拡散させる方法を考えることが今後の高齢者施策のテーマであらねばならない。
都市化が進む社会では、地域社会や近隣レベルでの人間関係が次第に省略されがちになり、地域レベルでの親密な関係が乏しくなってしまう。
しかし高齢者にとって、家族と地域社会とは機能的に補い合う関係で、高齢者は地域社会により支えられており、同時に地域社会を支える資源にもなり得る。
本当の介護予防とは、地域システムと連動して始めて成り立つもので、個人の生活と切り離れた形で、筋力維持を図っても続かない。