夜間のポータブルトイレについて
身体に障害がない人が、排泄感で夜間目覚め、トイレで排泄する排泄感は排泄行動に即結びつく。
しかし身体に障害がある方の場合、排泄するために目が覚め、そこから排泄動作場所に移動するために、移動手段である車椅子への移乗という行為を行い、さらに車椅子を操作し(あるいは車椅子を押してもらい)排泄場所まで移動し、そこでさらに介助を受け、便器に移乗するために立位をとり、その際下衣を下ろす介助を受け、そしてやっと便器に座って排泄する、という手順になることは誰が考えてもわかるだろう。
さてここで日中と夜間の違いを意識していただきたい。
まず覚醒時の感覚と、寝ている場合の違いで、移動時間中に排泄が間に合うかという問題も出てこようが、それよりももっと大切な視点があると僕は思っている。
つまり一連のトイレへの便器へ移動する、という行為の中で、すっかり目が冴えてしまわないか、という視点である。
これは以外と重要だ。
いつでもどこでも眠ることができる人には、なかなか寝つけない方の悩みはわからないだろうが、高齢者にはこうした悩みを抱える方が多い。
できれば排泄の介助行為が、睡眠を妨げない状況で行なわれるのが望ましい、という視点でケアカンファレンスが進行される必要もあるのだ。
ましてやオムツへの排泄を強いるわけではない。
夜間の2度程度の排泄を、トイレでなく、ベッドサードのポータブルを利用したとて、生活の質の低下といえるはずがない。
トイレで排泄することの重要性は十分承知しているが、それも時と場合の問題である。
いつ、いかなる状況でも、トイレで排泄することが絶対ではない。この方にとって、夜間のポータブルトイレでの排泄は、必要で適切なケアスタイルだろうと思っている。
大事な点は、介護者の価値観を絶対的なものとして、利用者に押し付けないことだ。
この場合はトイレでの排泄が人間の生活の質として考えるとき、最良の場所という価値観だ。
頑張る場所では頑張ってもらってよいし、頑張れる状況を作ることも大事だ。しかし人間は頑張ってばかりいられないということを忘れてはならない。
ましてや夜間の排泄がトイレで行なわれないことのみをもって「頑張りが足りない」なんていうことにはならない。