新入職員にすべきこと
伝えたいことがたくさんあるが、新入社員にそれをすべて吸収できるキャパがあるかどうか。
新入職員の立場で考えると、この時期は職場の雰囲気に慣れ、職員や利用者の顔と名前を一致させ、仕事の手順をはじめ、いろいろなことを覚えなければならない。そのような時期であるからこそ、詰め込み過ぎずに、基礎部分だけをしっかりと確実に伝えたいものだ。管理者の思いを、すべてこの時期に詰め込こもうとしても、その思いは新入職員という器には入りきれないことにも配慮が必要。
また座学でいくら思いを伝えても、実際の介護場面で先輩職員が、その思いとは裏腹な対応をしているとしたら、座学による基礎研修は意味のないセレモニー化して、まったく無駄なものになる。
例えば言葉遣いを含めた利用者対応について、お客様として接するにふさわしい丁寧な対応の必要性をいくら唱えても、現場の実務についた瞬間、それがお題目に終わって、職場の全体の雰囲気がサービスマネーに欠け、ぞんざいな言葉が飛び交い、横柄な態度が許されているようならば、一ヶ月もしないうちに新入職員の感覚は麻痺して低きに流れ、無礼な慣れ慣れしい言葉を親しみやすい言葉かけであると勘違いし、横柄な態度をなんとも思わなくなる。
これでは貴重な時間とお金をかけて、基礎研修を行う意味がなくなってしまうのだ。それは絶対避けなければならない。
逆に、職場全体でサービスマナーの意識が高く、横柄な言葉を注意する土壌があるなら、そうした職場で「タメ口」で利用者に話しかける新入職員は居なくなる。それだけでも職員教育の当初の目的は達せられるのだ。つまりこの部分は、職員が日常的に利用者に適切な態度と丁寧な言葉遣いを行っているだけで、あえて座学で伝えなくてもよいことになる。
意識を強く持って、座学による基礎研修で伝えるべきこと、伝えなくて良いことを区別してプログラムを作る必要がある。もちろん、わかりやすい伝え方をまずは心がけるべきであり、簡単なことを難しく伝えることがプロだという勘違いをなくすことは最も重要である。
忘れてはならないことは、職員研修というのは、入職時研修で終わるものではなく、一生続くものであるし、入職後1年間は、新人職員として定期的に段階を踏んだ教育が行われる必要がある。
鉄を熱いうちに打つことは大事であるが、熱い管理者の思いを、この時期だけですべて伝えようとすると、管理者の熱すぎるエネルギーに燃え尽きてしまう新人も出かねないという配慮も必要となる。
ゆっくり確実に、少しずつ水や肥料を与えることで、小さな種は素敵な花びらを開いてくれるようになるだろう。